陽の光を通さず、今日はずっとこんな天気だったと思う。雨ばかりが降って、キモチもなんだか晴れない。今はガラスを透して外を見ている感じ。私は温室の中にいた。
温室だからといって一定の温度を保たせておく設備をしているわけでもなく、あるがままの温度で花を育てている。

どこか、外の天気を感じるのか、花の様子がおかしい。そんな中、一段と元気のいい花があった。それは、雨の日にしか咲かない花。
その花を一緒に見て、咲くのを楽しみにしてくれている人がいた。だったらすぐに見せてあげよう。そう思って、家に電話をしても留守みたいで、少し残念な気分。
なら、探しに行っちゃおうかな。
そう思って家を出ようとすると、お客さんと鉢合わせ。

「あれ?どっか出掛けるの?」

鉢合わせしたのはもう一人の幼なじみのスザクちゃん。それに、「でも、すぐに戻るから、上がってて」と告げて家を出る。少し可笑しいと思っただろうな、だって自分は鉢植えを抱き抱えて家を出ようとしていたのだから。

やっぱり天気は中で見た時と変わらない、雨。いくら雨の日に咲く花でも、こんなに雨が降っていたとしたら死んでしまう。すぐに彼を見つけなきゃ。大切に鉢植えを抱き抱え家を出た。


++++++++++


彼の好きなとこに狙いを定めて行ってはみるが、どこもハズレ。何気なく道路を歩いていると知っている後ろ姿。随分雨も降っていて、傘をささないとダメな状態。
でもそんな彼は何もさしていなくて、シャーリーが見えて・・・そして。

よく知る相手の背中、でも、出かかった言葉は途中で飲み込まれた。


キスしてる?

シャーリーと??


自分にはキスなどあまりしてくれないのに。ショックが大きすぎて一瞬世界が止まってしまった。
脱落ってこう言うことを言うのかな?全てを投げだし走っていた。
さっきまで大事に持っていた鉢植えも、こんな雨の時に必需品の傘も全部置いてきた。
ただそこにいたくなくて、家路を急いだ。
我家が見えるとなんだかホッとした。ドアを開けてすぐに閉めた。ルー君がもしかすると、そこまで来ているかもしれないから。

「随分早かったね、忘れ物でもした?…っ、ずぶ濡れじゃないか!一体…!?」

自分が上がっていてくれと言ったから、スザクちゃんがいるのは当たり前なのに。最初はずぶ濡れな私にビックリしていたが、意図が分かったのか思わず黙ってしまった。
今彼にどんな言葉を掛けられてもなんの意味もなさそう。
そんなことを考えていると、ドアに背中があたり、目の前はスザクちゃんの肩。ドアとスザクちゃんに挟まれてしまった。

それでぎゅっとされてしまったら・・・・

私ってかわいそうなのかな?ただルー君にお花見せたかっただけなの。
あんなに楽しみにしてくれていたから。目頭が熱くなって、自分が涙を流しているのが分かった。

もし、

もし今この場で、何も考えずに、周りも気にせず泣き叫んだら…
貴方は迎えに来てくれますか?

「僕のことを好きにさせてあげる、ルルーシュなんかにを渡さない。」
え?

抱きしめて、慰めてくれるんじゃなかったの?
気づいたら、スザクちゃんの唇と私の唇が重なって。

「っ、ん…はぁ、ス ザクちゃぁん?」

始めてした強く深いキス。でもそんなキスをされても思い出されるのはさっきの二人の光景。
そっと瞳から涙が流れる。

「僕だけしか考えられなくさせてあげる。ルルーシュのことなんか考える余裕なんてないくらいに。」

その言葉が合図だったかのように、またスザクちゃんの思いが篭ったような強いキスをされた。



* * * * * * *



「この傘、どこかで見たような…」
周りも気にせず泣き叫んだら、

  貴方は迎えに来てくれますか?
 
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