静かに皆が寝静まる中で私達はただずっとその場に 存在して息を吸っては吐いて貴重な酸素の無駄遣いを していた。
それでも息を止めないのが私達の傲慢なところだが、 人間なんて所詮全員傲慢なのだから致し方がないのである。 しかし彼は、いまどこの誰よりもかがやき、そして えらく、誰よりも傲慢だということを私はひしひしと 頬に感じていた。キス、15秒なり。


「ほんとうにわたしでいいの」
「いつもそれを聞くね、きみは」
「だって不安」
「僕はそんなに信用がない?」
「まあまあかな」
「随分大口を叩くようになったね」
「まあ怖い」


大部分が嘘で構成される会話だ。
私はクロヴィスが今頃泣くわ。と言ってやろうかと思ったけど それはそれで不謹慎だからやめた。
じりじりとしたあつさを 頬に残しつつ、私は彼に口付ける。深く、そっと。


「シュナイゼル、すきだよ」


なんていったらいいのかはわからないけど、
昔から私はずるがしこい子供だったのだ。
人の弱みにつけこむタイプで、そして決して
確定した事項を口にはしない。
だから私は愛してるなんて一言も言わない。
いつもすきどまり。そして体を求めようとはしないのだ。
抱いてともいわない。抱かれるのを待つばかりである。
ああ、なんてずるい子供。


「今日はどうする?」
「あまり気が乗らないけど、
 上手くやれる自信があるならヤれば?」
「・・・君って女は、」
「なに?」
「なんでもないよ、・・・愛してる、


うん、とはいわなかった。そのまま私は彼に抱きしめられて
目を閉じた。わたしは魔性の女だった。
彼に抱かれる間中、わたしは彼をこの後どうしようかと いうことを密かに考えていた。
暗くて見えない闇の中で、無表情で鳴いている。
そういう自分を、彼は好きなのだろうか。
ああ、反吐が出るね。ブリタニアって、馬鹿ばっかり。
私はその日の夜、彼を手玉に世界を征服する夢を見た。
あながちこれからの未来をよむ予知夢と言っても過言では
ないんじゃないだろうか。


「(たのしみ、ね)」


ただ私は朝の光に照らされながら、彼が起きるまで笑っていた。
そして彼が起きると、すぐさま哀しい顔をし、微笑しながら言うだろう。 「朝が来てしまったね、まだ傍にいたかったな」と。
彼は嬉しそうに微笑んでまた私を抱くのだろうか、
それとも真実に気づくのだろうか。


なら、その時私は。


そう考えているうち、彼がぱちりと目を覚ました。 もうどちらでもよかった。 だってただ私は、こうして居ればいいのでしょう?






哀しそうに

 
 
 
 

微笑んで、
 
 
 
 

何も知らない
 
 
 
 
フリをして







彼の傍にずっと居ればいいんでしょう? 誰にも迷惑かけていないよ。ただ私は、自由に生きるだけ。

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